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キウチトリエンナーレ2004・名前と美術
GALLERY wks.(大阪府)
2004年11月29日(月)〜12月18日(土)
展覧会場
会場: | GALLERY wks. [url] |
期間: | 2004年11月29日(月)〜12月18日(土) |
開館: | 11:00〜19:00(土曜日は11:00〜17:00) 日曜日休廊 |
住所: | 大阪市北区西天満3-14-26 中之島ロイヤルハイツ 11F 1103 |
電話: | 06-6363-2206 |
交通: | 地下鉄 南森町駅より徒歩8分 京阪淀屋橋駅より徒歩9分 梅田より徒歩15分 |
地図: | [url] |
作品写真
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2004年の個展です。3年ぶりとなる個展は、3年に一度の「トリエンナーレ」であり、3部作の完結編(一応)。名前をテーマにし、鑑賞者は画廊をたくさん巡った気になるという名目でただ名前を書かされる、という「画廊巡り〜妄想十一カ所〜」や、名刺をテーマとしたシリーズなどを発表。
キウチトリエンナーレ2004 〜名前と美術〜
「キウチトリエンナーレ2004」とは、「キウチアニュアル2000」「キウチビエンナーレ2001」に続く美術祭典であり、木内貴志の個展であります。
「言葉と美術」(2000)、「教育と美術」(2001)ときて、今回のテーマは「名前と美術」です。
現代社会において欠かす事のできない、人が持つ「名前」。人が人である為の明かしのようなこの「名前」が時にいろんな意味をもってきて、本来の価値や本質を大きく揺るがしたりすることもしばしばあります。
美術の世界においても、この「名前」が作品と同じく、時にはそれ以上に大きな役割を果たしてしまう事もしばしばあるように思われ……って、めんどくさくなってきたので、ゴタクはこのくらいにしまして、とにかく今回はそのような「名前」に注目した作品を制作されてます京都在住のアーチスト、木内貴志による作品をいくつか用意しまして、「キウチトリエンナーレ2004」を開催いたします。
現時点で作品が完成してないので、内容には細かく説明する事はできませんが、作家は「一度にたくさんの画廊をまわったような、心暖まるありがたい作品にしたい」といってますが、どやろ?
キウチトリエンナーレ2004実行委員会
今日、来ていただいたお客さんの中で、僕のこと知ってる人います?
知らない人には、とりあえず名前だけでも覚えて帰って下さい。
木内貴志
(開催当時のご挨拶文)
制度化とボク
日本には美術とかアートがある‥らしい。この「‥らしい」の部分と木内貴志の表現は関わっている。美術に対して言い切らない感じ、あるいは言い訳めいた言い回しは、深く関わろうとする人ほど実感したことがあるはずだ。逆に美術に興味のない人のほうが、楽観的に美術の実在を、油絵や彫刻の実在と同じに信じている。こんな状況下の日本で私は美術なんて不可能じゃないかとたまに思うことがある。逆に大衆化の一途をたどるアートはただいま増殖中。さてここに書いている美術やアートというのは、人によって解釈が異なる、意味のグレーゾーンを持つ言葉である。明治以後に輸入された概念で白黒はっきりしないで今日まで存続してきた。その一方で美術は学校の教科だ。美術大学なんてのもあるし、全国にはかなりの数の美術館もあり一部が存続の危機にある。概念に比べると制度は楽である。利用するかしないかの二者択一で扱えるから。
「妄想ギャラリー巡り」は、架空のギャラリーの芳名録が並び、訪れた人が記帳をして、さもいくつかのギャラリーをめぐったような実感を感じさせる。制度化され疑問視すらされないギャラリーを巡る人々の行動を表現に転化した本作は、ギャラリー巡りの目的とは、作品鑑賞ではなく記帳により足跡を残す動物的習性なのかとツッコミを入れている。ただ木内がツッコミを入れているのは、美術業界ではなく自分自身にであろう。日々の半分をアルバイトに費やしている自分が、たまにアーティストとして扱われる居心地の悪さを、つまり、制度化されてしまうボクと現実のボクのギャップを表現の原動力としている。展覧会にトリエンナーレと大仰な名前をつけるのも、制度化されつつも一般化していない舶来の言葉の隙間をねらってのことだ。これらは一見皮肉に見えるが、実際は愛があふれており、木内自身がマメに展覧会を巡り、絶えず美術のことばかりを考えすぎた結果の表現なのだ。
私は美術が好きである。だからいつか「日本には独自の美術がある」と言い切りたい。ゆえに「‥らしい」の現実を写そうとする木内の表現は興味深い。それは、制度に依って「美術だから」「文化だから」と免罪符のようにポジティブに扱われる無責任な言動に小さいながら反旗を翻しているからだ。
岡山拓(美術家、ライター、美術教育者)
(岡山拓氏による展覧会テキスト)